FEET in DESIGN のこと



 今回の旅で、出発前、心配していたことのひとつに「膝の故障」があった。

 子供のころ、身長が大きく伸び始めた頃、膝の痛みに困った時期がある。 急激に背が伸びる時、「成長痛」とも言われる膝の痛みに悩まされ、特に左膝が痛かったのだ。 少しでも膝を机の角などにぶつけると、激しく骨を突き刺すような痛みに、しばらく悶えるというような感じだった。 しかし、ある程度身長も伸びきってくると、膝の痛みは治まった。

 次に、膝が痛みだしたのは30代も半ばを過ぎたころだった。 運動不足のせいか、なんとなく膝に衰えを感じるようになったころ、ゴルフを始めたのだ。 しかし、最初はコースへ出てもうまく打てないために、ボールを追いかけてはコースの斜面を走って登ったり降りたりを繰り返していた。 すると、膝に無理な負担がかかり痛み出した。 運動不足もたたったのだろう、特に左膝が痛み、ひどい時は、歩くのも大変な状態となった。 しばらく休むと痛みは無くなるのだが、無理をすると何かの拍子に痛みが出るといようなことになった。
 そんなある日、知人に誘われ、高尾山から陣馬山へのハイキングに出かけた。 すると、後半の下りに差しかかった時、激しい膝の痛みに見舞われた。 坂道は下りの方が、格段に膝への負担がかかるのだ。 左膝をかばいながら、ほうほうのていで山を降りたのだが、ついに「膝痛持ち」になってしまったのかと、我が年齢を初めて意識することになった。 今から3年ほど前、41歳の頃である。

 その後は無理をしなくなったのだろう、膝の痛みを感じることは少なくなったのだが、いつ痛み出すのかと、心配がつきまとうようになった。 そのような中での旅だったのである。

 東海道と言えば、最大の難所として知られる天下の剣「箱根」の他、「鈴鹿峠」、「小夜の中山」など険しい山道、坂道が数多い。 当然登れば下る訳で、膝への負担は想像に難くない。 もし、途中でリタイヤするようなことになるとすれば、時期的に熱中症でなければ、膝の故障が原因になるのではないかと心配したのだ。 かつて、高尾山・陣馬山のハイキングで膝の痛みを体験した時は、ほうほうのていで帰りのバス停まで下山したが、今回は距離が違う。 仮に箱根で膝が痛みだしたとしたら、その先の道程は何百キロとあるのだ。 膝の痛みをかばってその距離を歩くことはできない。

 しかし、結果的に旅中、膝の痛みで困ることはなかった(熱中症についても、おかげさまで無事であった)。 実は、旅に出る一年半ほど前から「フィートインデザイン」のインソールを使っていたのである。

 旅に出る一年半ほど前、仕事の取引先に、私の友人1人を交え食事会をしたことがあった。 その時、友人が「フィートインデザイン」のインソールの話をしたのである。 それによると、このインソールは各々の足を3Dデジタルで測定、ひとつひとつをカスタムメイドすることにより、理想的な身体バランスの維持に役立ち、筋肉や関節を正しく動かすサポートをするということだった。 そこで、膝への不安を感じていた私は、少し値段が高いことが気になりながらも、ひとつ作ってみることにしたのだ。
 実際に3Dデジタルでの足裏測定をしてもらうと、なんと私の足は結構なへん平足だということが分かった。 見た目にはきちんと土ふまずがあって、まさかへん平足と言われるとは思わなかったのだが、実際には足が着地したときに、土ふまずはへしゃげてしまい、重心が内側にずれてしまっているようだった。 後日仕上がって来たインソールは、なるほど土ふまずの部分が心地よく盛り上がっており、内側に足裏がへしゃげてしまわないように、支えてくれる力強さを感じるものだった。 かといって硬さは感じられず、適度な強度が計算されているようだった。

 しかし、早速いつもの靴にインソールを仕込んで歩いてみたが、何かが劇的に変わるというような感覚は無かった。 高価なインソールを入れているということで、新しい高価な靴をはいた時のような高揚感があっただけである。 違いに気がつき始めたのは、はき始めてから何週間がたってからだった。
 最初に気が付いたことは指の痛みだった。 それまでは、靴をはいて歩いていると、特に左足の薬指の裏側(腹)が、中指の第二関節あたりに押しつぶされ、たこのように硬くなっていたのだ。 そのため、時々爪切りで硬くなった皮膚を切りとるのだが、歩いているとその辺りが肉が潰れるかのように「ピキッ」と痛むことがあった。 その度に靴の中で足指の位置を変えるようにして歩くのだが、痛みをかばうようにして歩かねばならなかった。 同様の症状が、軽微ながらも右足にもあり、うまく指の位置が収まっている時には、気持ちよく歩けるのだが、そうでない時には歩幅も小さくなるようだった。
 まずは、この指の痛みを感じなくなってきたことに気が付いた。 そして、習慣になっていた、硬くなった薬指の皮膚を爪切りで切るという作業も無くなった。 皮膚が押しつぶされて硬くなることが無くなったのだ。 それにともない、ずんずん大股で歩くようになっていた。

 それから、一年ほどが過ぎ、最近膝が痛いと思わなくなっていることにも気がついた。 もちろん、先述の通り「無理をしなくなった」からという理由もあり、すべてがインソールのおかげとは直ぐには思えなかったのだが、もうひとつ気がついたことがあったのだ。 ある程度あぐらがかけるようになったことである。 左膝が痛くなってから、まっすぐに折り曲げる正座とは異なり、ひねるようにして膝を折り曲げるあぐらが、痛みがあってかけなくなっていた。 かいてもすぐに左膝が痛くなり、そうなると、今度は伸ばすのが大変になるのだ。 それが、まったく抵抗がなくなった訳ではないが、椅子に座った状態であぐらがかけるようになったのだ(床の上であぐらをかくより、椅子の上でかいたほうが、膝に負担がかかるが、長時間椅子に座っていると腰に負担がかかってくるので、時々あぐらをかくと楽なのだ)。

 それでも、インソールを入れてから、ゴルフや山登りへは出かけていなかったので、効果を実証出来ていなかった。 そんな中での東海道の旅だった。

 もちろん、まったく足の故障が無かった訳ではない。 2日目にマメが出来て水ぶくれが出来た時は痛かった。 最初はつぶさない方が良いかと思い、バンドエイドでカバーした上にテーピングを巻いて歩いたが、次第に痛みが強くなってきた。 そこで、7日目にビジネスホテルに宿泊させてもらった際、針で水を抜いて治療したところ痛みも無くなり、その後は再発を防ぐために必要な箇所にテーピングを巻いて歩いたところ好調だった。 それ以降、マメで大きく苦しむことはなかったと思う。
 坂道、特に下りには気を使って歩いた。 箱根から三島へは、かなり長い下りが続いた。 いま思えば、相当に膝故障のリスクが高かった箇所だと思う。 その後も、金谷から菊川・小夜の山中峠・日坂の間(8日目)は、高低差は箱根ほどは無いが、こう配がかなりきつく、旧道をそのまま歩く箇所の下りは、かなり膝への負担があったはずだ。 鈴鹿峠も距離は思ったより短いが、かなり急勾配の登りだった。
 本当に、500kmを越える道中で一度も膝に不安を感じなかったのはありがたかった。

 では、インソールの膝への効果を実感したのはいつだったか。 それは旅を終えて2カ月も過ぎてからだった。
 「フィートインデザイン」のインソールは、足裏(土ふまず)の形状に合わせた、適度な硬さの板(骨格というべきか)を布地やウレタンのような材質ではさんで、インソールの形にしている。 骨格以外の部分は、どうしても長期の使用で劣化してくるので、そのような時は張り替えをしてもらうことが出来る。 その張り替えを頼んだ時のことである。
 当然、張り替えの間はインソールを業者に預けなければならないので、その間はインソール無しで靴をはいていた。 10日間くらいだっただろうか? すると久しぶりの感覚を足に感じたのだ。 薬指が圧迫されて痛む感覚と、左膝への違和感だ。 本来、足の裏から真っすぐに膝関節に加わるべき接地圧力が、土ふまずがへしゃげ、内側へ「く」の字に曲がった膝関節に、斜めの力が無理に加わっていることを体感したのである。 初めて「フィートインデザイン」のインソールを入れた時には劇的な変化を感じなかったのだが、長らく使用して、ある日突然使用をやめた時、初めてその効果を実感することが出来たのだ。
 そのことは、こんな風にも考えさせてくれた。 恐らくこのインソールで得られる効果というものは、特別な結果や状態ではなく、本来あるべき、当たり前の状態を提供してくれるということに過ぎないのだろう。 だからこそ、その上で使用する各々が、その当たり前の状態を活かして何かにチャレンジするのでなければ、効果(感謝)を実感できないのではないだろうか。 日常の中で、「当たり前」に感謝するということは、なかなか出来ないものである。

 このインソールを使用している人や団体には、プロのスポーツ選手や、消防・警察・医療関係などが多いと聞く。 当たり前に満足をせず努力をする人、もしくは世の中の当たり前を守るために努力をしている人々。 そのような方々に多く利用されているということに、今、納得しきりなのである。







インソールの話をしてくれた友人、久保田敦君(左)。 潟tィートインデザインを経営する。


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